第221話
「庄四郎さの枝垂れヒバ」
- おりゃおまいたに、もういっぺん話いてみすと思うんやがな。おりゃ植木があるんや。ここんとこの庭の隅ね。おまいたに話いたと思うんやが、浄楽寺のご院主ね・・・
第222話
「猿の天国」
- そうや。猿が来そめてから大分になるの。たいてい毎年来るな。ことしも、こないだから来とる。柿を平げてまわな、他へ行かんで。もう暫くおるぞいな。ここらね。今・・・
第223話
「満洲移民 男盛り」
- わしんたが、家内と男の子一人連れて劉太壕へ入植したのはな、昭和十七年の五月十七日で、国田栄吉つぁや石田弥七つぁも一緒やった。思い立ちは、こっちにおると・・・
第224話
「満洲移民 生活断片」
- 家を造るに、朝鮮人は、ピーホヮンズってて、屋根が土なんじゃ。横は煉瓦を積み上げて、屋根は、垂小の上に、小舞の代わりに、コーリャンのからを編んでひっかぶせて・・・
第225話
「満洲移民 明と暗」
- 満洲では、とんとん拍子で、わしが思う通りやったな。調子がよかったな。とにかく、向こうへ行って一年たった時やったろうか。七まと二人が話し合ったのは。そうやが・・・
第226話
「明方最後の木地師」その一
- わたしは、越前の大野の奥の上内波で、叔父が木地をやっとったもんじゃから、そこへ、十四の年の七月、小僧にはいって、木地挽くことを習ったもんじゃ。そこで・・・
第227話
「明方最後の木地師」その二
- 荒取りした木地は、山中と越前の鯖江の奥の川田ってとこへ出したんじゃ。山中は、わたしの親がおるもんだから、ただ無茶苦茶にどんどこ、どんどこ送るけど、川田の・・・
第228話
「足跡」その一
- 父は、養蚕気違いで、春蚕だけでも百三貫取ったことがあるです。当時、畑が一町五反以上、水田が三反そこそこやったろうね。父は、わたしよりも体が貧弱やった・・・
第229話
「足跡」その二
- さて、土地改良やがね。開拓にかかると、こどもが学校へ出せん、弁当がつめてやれん、本も買ってやれんと。山へ行って炭焼いたりせんとやっていけんと。それを・・・
第230話
「玄信様のお孫」
- 川佐の実家は、昔、庄屋やったんですけど、父は、からだがあんまり丈夫でなかったんで、百姓はちょっともせずに、絵をかいたり、植木や盆栽をいじって遊んで・・・
第231話
「口長尾の今昔」
- 新次郎さの製糸が、上の方にあったことは知りませんけどよ。わしらのおふくろさんたは、あそこで糸を引かしたらしい。引くもな五人ぐらいらしかったな。製糸も・・・
第232話
「一番嬉しかったこと」
- 二十二、三年も前に、石田英之さんとこで、わしら同志が寄り合って、いろいろ話し合ったことがありますがな。小保木で四、五人かな。みんなで・・・
第233話
「寒水の男ぶり」
- あいにくの雪で、えらい道のわるいとこをご苦労様やったな。こういう時、昔の衆は〈えろう道ぞくないして〉ってことを言ったもんじゃな。これが、この間話いた・・・
第234話
「人の一生」その一
- 葬式と祝儀だけやと思っとったら、ついでに生まれた時からって話で、ちょっと面くらったわけやけんど。お産の話といっても、オビヤシナイ、まぁ、その辺から・・・
第235話
「人の一生」その二
- 肴はかずのこにたっくり、盃すえて、そんだけで座敷つくって、座ぶとん置いて、双方のお客様に並んでもらって、まず、お餅を入れた〈座づけ〉の吸物やな、その日・・・
第236話
「人の一生」その三
- 前もって身近なもんだけで相談して、死去知らせは、両隣を頼んで回ってもらう。組合と親類を頼んで葬式の日にちを決めて、そこで責任者も立てる。こういったことは・・・
第237話
「人の一生」その四
- 葬式は、天気なら、家で枕勤め済まいて、どうでもこうでも野へ行ってやったんやしな。雨が降るといと仕方なし家でやったわけやけども。昔はな、飾り物が・・・
第238話
「こぼれ話 奥住の巻」
- 郡上街道を高山へ向けて、二人分の駄貨をもらって死飛脚に出かけた男が、西ウレを通ったら〈通るこたならん。行くこたならん〉ってて、誰やらが呼ばった・・・
©1997 - gujodotcom