「源助さん」
- ハァー源助さん源助さんと 言うて鳴く鳥は
小さな鳥だよチョイト色鳥よ
- ハァー貴方はたちで 私は十九 月も朧の チョイト浴衣がけ
- ハァー二人寄り添い 月影踏んで そぞろ歩きの チョイト粋なこと
- ハァーわしと貴方は 羽織の紐で 固く結んで チョイト胸にある
- ハァー浴衣姿に 髪結い上げて 見せてやりたや チョイトあの人に
- ハァー恋に身を焼く 蛍じゃないが 私ゃ源助さんに チョイト身を焦がす
- ハァー右と左の 手と手をつなぎ 人目忍んだ チョイト夜も更ける
- ハァー貴方源助さんで わたしはお小夜 ともに恋した チョイト二人仲
- ハァー燃えて散りゆく 花火じゃないが 私ゃ源助さんに チョイト燃えて散る
- ハァー源助さん源助さんと 言うて鳴く鳥は 八千八声のチョイト ほととぎす 恋に身を焼く チョイトほととぎす
- ハァーわしとお前は 小藪の小梅 なれど落ちれと チョイト人知らず
- ハァー一夜おいでと 言いたいけれど まんだかかまの チョイトそばに寝る
- ハァー来るか来るかと 切子の下で わしの待つ人 チョイトまだ来ない
- ハァー踊る娘の 腰つき見やれ 抱いて寝たよな チョイト夢を見た
- ハァーよいと思えば あの君様の おそば吹きくる チョイト風もよい
- ハァー若い盛りは 二度とはないで 親も目永に チョイトしておくれ
- ハァーお前百まで わしゃ九十九まで ともに白髪の チョイトはえるまで
- ハァー毎夜毎晩 お門に立ちて とがめられては チョイトおくれるな
- ハァー恋しやさしや 雪駄の音は 主はどなたか チョイト知らねども
- ハァー桑の中から 小唄がもれる 小唄聞きたや チョイト顔見たや
- ハァーわしの若い時ゃ 五尺の袖で 道の小草も チョイトなびかせた
- ハァー郡上の白鳥 住みよいところ 水も清いが チョイト人も良い
- ハァー鳥も通わぬ 奥山なれど 住めば都よ チョイトわがさとよ
- ハァー様となら行く わしゃどこまでも しだれ柳の チョイトうらまでも
- ハァー馬は三歳 馬方二十歳 手綱取る手の チョイト粋なこと
- ハァー惚れたお前に 恋い口説かれて 弾む踊りに チョイト下駄の音
- ハァー来るか来るかと 待つ夜は来ずに 待たぬ夜さきて チョイト門に立つ
- ハァー心細いは 奥飛騨街道 川の鳴瀬が チョイト鹿の声
- ハァー昔馴染みと 去年の暦 あれど今年は チョイト間に合わぬ
- ハァー鶯でさえ 初音はよいに 様と初寝は チョイトなおよかろ
- ハァー恋にこがれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が チョイト身をこがす
- ハァー高五郎通れば おまむの石碑 おまむ小源治 チョイトすすり泣き
- ハァー高い山には霞がかかる 若い娘にゃ チョイト気がかかる
- ハァー惚れたお前に 恋口説かれて はずむ踊りの チョイト下駄の音
- ハァー鶯が鳴く 春かと思や 夏の世やそうで チョイト蝉が鳴く
- ハァー昔語るや 数ある民話 伝え行きたい チョイト後の世に
- ハァー唄の文句で 知らせた主に わたしゃおどりの チョイト手で知らす
- ハァー思い出しては くれるか様よ わたしゃ忘れる チョイト暇がない
- ハァー殿を見る目は 糸より細い 親を見る娘は チョイト猿まなこ
- ハァー盆に踊ろよ 踊らせましょう 老いも若きも チョイト皆踊る
- ハァー色が黒うて 惚れ手がなけりゃ 山のからすは チョイト後家ばかり
- ハァー信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃあなたの チョイトそばがよい
- ハァー色で身を売る 西瓜でさえも 中にや苦労の チョイト種がある
- ハァーお前正宗 わしゃさび刀 あなた切れても チョイトわしゃ切れぬ
- ハァー声はすれども 姿は見えぬ 様は草場の チョイトきりぎりす
- ハァー抱いて寝もせず いとまもくれず つなぎ舟かよ チョイトわしが身は
- ハァー竹に雀は 品よくとまる とめてとまらぬ チョイト色の道
- ハァー娘島田に 蝶々がとまる とまるはずだよ チョイト花じゃもの
- ハァーよそに妻持ちゃ 川端柳 水の流れに チョイト苦労する
- ハァー今宵別れて いつ逢いましょうか いとしあなたは チョイト旅の方
- ハァー汽車は出て行く 煙は残る 残る煙は チョイトしゃくの種
- ハァー天気よければ 大垣様の 城の太鼓の チョイト音(ね)のよさよ
©1997 - gujodotcom